受身(受動態)と日本語の「れる・られる」の使い分け

目次

日本語は「れる・られる」という表現をよく使います。

「母に買い物に行くように言われた」
「友達に宿題を手伝うよう頼まれた」

・・・これらの文章をどうやって英語で伝えますか?
「~れる」と聞くと、「受身(受動態)を使ったほうがいいの?」と直感で思う方も
多いかもしれません。

ですが、英語では受身を使うよりも、能動態(主語+動詞の普通の語順)の
文章で伝えたほうがスッキリ伝わりやすい場合のほうが多い
のです。
確かに、日本語は「れる・られる」という表現を好みます。

例えば、「妹から数冊本をもらった」

I was given some books by my sister.(受動態) とすると日本語的、
My sister gave me some books. (能動態)の方がより英語的な表現になります。

このように、英語では能動態が好まれることが多くあります。
ですが、あえて受動態が使われることもあります。
今日は、受動態を使うタイミング、使わないタイミングについて
解説していきたいと思います。

1.まずは能動態でより英語らしい表現を!

「母に買い物に行くように言われた」

言った(told)の動作主は「母」。
動作を受けているのは「私」です。

英語らしく動作主を主語にしましょう。

My mother told me to go grocery shopping.

「友達に宿題を手伝うよう頼まれた」

頼んだ(asked)のは友達なので主語は「友達」です。
動作主を主語にすることを意識しましょう。

My friend asked me to help him with his homework.

2. 【被害をあらわす】日本語の「られる」

よくある間違いに「財布が盗まれた」
I was stolen my wallet.

という文章にしてしまうことがあります。
実はこの「盗まれた」という表現は、
日本語において被害を表す「れる・られる」といわれています。

「赤ちゃんが泣いた」→「赤ちゃんに泣かれた」
「妻が家をでた(出勤など)」→「妻に家をでられた(離婚?)」

この「れる・られる」は被害や困った状況といったニュアンスを醸し出す日本語です。
英語の受け身にはできなくなります。
上記の文章を英語では、

My baby cried.→I made my baby cry.
My wife left home.→My wife left me.

という受け身ではない文章でニュアンスの違いを表現します。

「財布が盗まれた」は「誰か」が盗んだので

Someone stole my wallet.

もしくは「私」が盗まれたわけではないので
I was stolenとはできずに

I had my wallet stolen

という表現があります。

日本語では「私」は被害にあった、というニュアンスで「られる」がつかわれますが、
「私」は動作を受けているわけではないので、
受動態の文章にはしません。

3.あえて受け身(受動態)をとる場合

以前、会話中に受動態が使われていることに気が付いた生徒さんより以下の質問を受けました。

「受動態ってできれば避けた方がいいって聞いたことがあるんですけど、
あえて受動態にした方がいいこともあるんですか?」

英語学習をよくされている人なら耳にしたことがあるかもしれません。
それでは最後に、あえて受動態を使う場合をみてみましょう。

(1)動作主が明らか、不明、もしくは重要でない場合
(2)主語をあえて目立たせたい意図がある場合
(3)動作を受ける人や物が話題の中心にいる場合
(4)やり方の説明や科学に関する文章に多い

(1)まず一つ目の、【動作主が明らかな場合、重要でない場合】をみてみます。

More than ten different languages are spoken in that country.(by people)
あの国では10以上の言語が話されている。→「その国の人が」は明らか。

The pyramids were built around 2500BC.
ピラミッドは紀元前2500年ごろにつくられた。→「作った人々が誰か」は重要でない。

All major credit cards are accepted. (by the store.)
すべてのクレジットカードが使用できます。→「その店が」は重要でない。

(2)【主語を目立たせたい、強調したい場合】もあります。

This is the wallet which was stolen from me a year ago.
一年前に盗まれた私の財布はこれです。→この財布がまさに~!と強調したい。

(3)次に、【動作を受ける側が話題の中心にいる場合】

The next Olympic games will be held in Tokyo. I’m really looking forward to it.
次のオリンピックは東京で開かれる。とても楽しみだ。→話題の中心はthe next olympic games

Our house was destroyed by the storm last year. It was built just three years ago.
私たちの家は嵐で崩壊した。3年前建てたばかりなのに。→話題の中心はour house

(4)そして、科学関連の記事、プロセスや方法を説明したもの、理系のレポートなどにも受動態はよく登場します。

The temperature was measured after all the processes were completed.
すべてのプロセスの後で気温を測った。

Water is made up of two elements, hydrogen and oxygen.
水は水素と酸素の二つの成分からなる。

受身(受動態)の使い方、まとめ

まずは日本語にみられる「れる・られる」を一旦離して、能動態にして話す練習をしましょう。
基本は「動作主」を先にもってくる事

「我が家は強盗にはいられた」も「弟は先生に面白い本をすすめてもらった」も
動作主は「我が家」でも「弟」でもありません。
強盗に入ったのは「誰か(泥棒)」であり、本をすすめたのは「先生」。

Someone broke into my house.
My brother’s teacher recommended him an interesting book.

となります。
この表現がまずできるようになって、次に上級テク、「あえて受動態をつかう」に挑戦しましょう。
ルールを考えながらだとアウトプットは難しいところですが、
普段メールやニュースなどの文章を読むときに受動態をみつけたら
「あ、ここ強調したいんだな」とか「そういえば科学実験に関する文章だ」と思い出してみてください。
リーディングやリスニングからインプットしたものをどんどん真似ていくと、
受動態もスマートに使いこなせる様になります。